多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群(以下PCOS)は、卵胞が発育するのに時間がかかりなかなか排卵しない、
排卵障害の中で多くみられるものになります。

PCOSでは、超音波で卵巣をみると10mmほどの同じくらいの大きさの卵胞が沢山出来て、
卵巣の中で円をかくように1列に並び(ネックレスサイン)、なかなか10mm以上は大きく
育たないことが特徴です。

【原因】

はっきりと解明されたわけではありませんが、排卵に関わるホルモンのバランスの乱れにある
という説が有力です。

卵胞の成長と排卵には、脳にある下垂体というところから分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)
と黄体形成ホルモン(以下LH)の2つが関わっています。

多嚢胞性卵巣症候群では、LHばかりが過剰に分泌され排卵がうまく行われなくなります。

排卵が起こらないと、排卵させようと更にLHの分泌が増え、ホルモンのバランスがますます
乱れるという悪循環に陥ります。

このように、多嚢胞性卵巣症候群ではLHのレベルが高いため、LHが本来持っている
『男性ホルモン(アンドロゲン)の産生亢進』作用が起こります。

男性ホルモンは、卵胞の発育を抑制し卵巣の膜を厚くして排卵を妨げます。

【インスリンとの関係性】

多嚢胞性卵巣症候群は、血糖値を下げるのに働きかけるインスリンという
ホルモンとも関連しています。

食事で摂取した炭水化物はブドウ糖へ分解され、インスリンによって細胞に
取り込まれエネルギーとして消費されていきます。ところが、糖の大量摂取等により
高血糖の状態となりインスリンの分泌が増えると、常にインスリンが血液中に
ある状態(高インスリン血症)が起こります。この状態が続くとインスリンに対する
細胞の感受性が低下し、通常のインスリンの量では糖のコントロールが
出来なくなってしまいます。(インスリン抵抗性)

高インスリン血症はLHの感受性を高めるため、上述した、LHが本来持つ男性ホルモンの
産生亢進作用がより強く起こります。